さんぽ日和

翻訳者・翻訳コーディネーターが日々の散歩中に考えたことを書いています。家族のこと、仕事のこと、自分の身の回りで起きたこと、いろいろなことを考えながら歩いています。

走る母たち

朝、保育園に娘を送っていく。子どもを預けられるのは8時半から。娘と私はいつも5分くらい前に着いて、しばしの間、各自友達とおしゃべりを楽しむ。でもそんなのどかな空気は8時半を境にガラッと変わる。母たちは、時間きっかりに子どもを預けて、それぞれの職場に向けてダッシュする。なかには、8時45分に職場でラジオ体操が始まる、なんてケースもあるけど、ラジオ体操のようなスローな動きより、その前のダッシュの方がよほどいい準備運動になっている気がする。とにかく各々必死。

私はそこまで急ぐ必要はないのだけど、なんとなくいつも、そんなたくましい母たちの流れに乗って小走りに家に帰る。

 

娘が保育園に行き始めてから早三年。娘もさることながら、私にも何人か友達ができた。最初からやたらウマが合う人もいれば、何かのきっかけで急に仲良くなった人も。もちろん、最後までゆっくり話せずじまいだったお母さんもいる。

 

朝のおしゃべりの時間は、貴重な情報交換の場でもある。あそこの病院はいつも混んでるとか、バレエシューズはどこが安いとか、今度の週末にあそこで祭りがあるよとか。ほんと、どれだけ助けられたことか。

 

仕事では人と直接会う機会がめったにないので、私にとっては貴重な生身の付き合いだったし、単純に毎日のおしゃべりが楽しかった。それに朝のたくましい母たちの姿を見ると、否が応でも「頑張らねば!」と気分があがる。ここでも友達に恵まれて良かったなと思う。

 

今日は卒園式。私にとってもかけがえのない毎日がそろそろ終わるのかと思うと寂しい。でも、母たちはこれからも毎朝ダッシュするのだろう。その姿を直接見ることはできなくても、今日も走っているであろう同志を思えば私も頑張れる気がする。

「普通」であること

よく、私ってフツーだな、と思う。「フツー」とカタカナで書くと、“取り柄がなくて、つまらない”というようなネガティブな印象が強くなるが、まさにそちらの方。

 

これまで勉強や運動はなんとか頑張って「中の上」か「上の下」。まさかすれ違いざまに二度見されるほどの美貌やスタイルではまったくない。翻訳者としても、スキルも経験もまだまだで、特定の分野に特別に通じているわけでもない。でも何とか仕事を続けていられるので、たぶん、全然ダメということでもなく、普通。

友達と遊んだり、恋愛したりといったことも、当時はもちろん全身全霊をかけてやっていたわけだけど、振り返ってみると一通り普通に経験してきたという感じなんだと思う。

 

普通に生きてこられたというのはとても幸運だというのは分かっているつもりだ。それに、今は好きな仕事をして、家族と幸せに暮らしているのだから、それで十分じゃないかと思うのに、何かの拍子にふと「私ってフツーだな」と感じては落ち込むことがある。めんどくさい。

 

そうやって「フツー」であることをどこかずっとコンプレックスに感じてきたけど、最近になって少しずつ、普通の感覚を持っていることは翻訳をするうえで(たぶん、他の仕事をするうえでも)実はとても有利なのかもしれないとプラスに考えられるようになった。

 

周りにいる人たちの“あるある”に、表面的ではない、実のある共感できるかどうか。それが結局、たくさんの人に響く仕事ができるかどうかを決めるのかもしれない、と。

 

誰かの文章を読んだり、誰かの話を聞いたりして、「自分だけじゃないんだ」と思えるとものすごくホッとする。ともすれば、「もうちょっと頑張ってみようかな」と力が湧いてくることもある。それがたぶん、共感を呼ぶ、ということなのだろう。

だとしたら、たとえ「フツー」のことであっても、というか、「フツー」であればあるほど、それに真剣に向き合うことで自分の中に生まれる悩みや思いは共感につながるはず。そういうものを大切に積み重ねて、いつか私も誰かにそっと寄り添えるような仕事ができたらと思う。

 

歩いて図書館に行く

とっても天気の良い休日。こんな日は外に出ないでいると損をした気分になる。というわけで、普段なら車で行く図書館に歩いて行くことにした。娘は自転車で、私は歩き。図書館までは自宅から3キロほどで、あと数週間もすれば花見客であふれる桜並木の川沿いの道が続く。歩くのにとても気持ちがいい。

 

娘の自転車のかごに返却する本5冊を入れ、私は紙芝居を1冊持って家を出る。紙芝居は、娘がどうしても!と言って借りたもの。久しぶりに手に取ると異様に大きく感じられる。これを持って3キロを歩くことになると分かっていれば絶対に借りなかったのに。

 

出発早々、娘は自転車をすいすい飛ばす。シミュレーションでは、私が優雅に歩く傍ら、娘は自転車操作にある程度手こずりながら進むはずだったので、そのギャップに「え、え…」と戸惑いながら必死についていく。最初の1キロほどは小走りで私が追いかける形に。紙芝居が風の抵抗をモロに受けてつらい。あえなく限界を迎えて一旦止まることを提案し、結局残りの2キロは娘の自転車を私が引いて二人で歩く。

 

図書館にたどり着いたところでご近所さんに遭遇。「大丈夫?顔色悪いよ?」と心配されたので、「歩いてきたの-」と言うと褒めてもらえて嬉しかった。借りていた本と、途中で捨てたくなった紙芝居を無事返却し、新たに娘の絵本と自分が読みたい本を合わせて6冊借りる。また歩いて帰る決心がつくまでに時間がかかり、図書館で少しだけ本を読もうとしたところを娘にせかされ、早々に自宅に向けて出発。帰りは二人で話をしながらゆっくり歩く。無事帰宅できたけど、もう少し体力をつけてから挑むべきだったと反省した。普段歩かない分、往復6キロの距離はとても疲れた。

でも、いつのまにか歩幅を合わせる側になった娘の成長が嬉しかった。それにやはり、春の空気は気持ちいい。

時間を持て余す

年度末というこの時期に、ちゃんとした翻訳者なら忙しいであろうこの時期に、まあまあ時間を持て余している。これは良くないよね!?と一抹の不安を覚えながらも、当面はどう動いていいか分からないので、とりあえず仕事部屋の掃除をした。こういうときは体を動かす作業がいい。

 

まずは机の右端と机左隣にある引き出しの上に積み重なっている書類を整理。チェックのために出力することがほとんどなので、それが終わってしまえばもう必要ないはずなのに何故こんなに溜め込むのか。掃除モードに入っている自分には、ちょっと前の自分の行動が心底理解できない。ほぼすべてシュレッダーへ。これからは作業が終わるたびにこまめに処分していこう。

 

次に本の整理。机の上には一軍、つまり頻繁に手に取るものを置く。机の上に置くにはちょっと大きすぎるけど、近くにあると嬉しいものは二軍として机のすぐ隣にある引き出しの上に置く。

一軍は「記者ハンドブック」「日本語の作文技術」など主に和訳で参照するものと「技術英語の基本」「英文ビジネスEメール」「技術系英文ライティング教本」など英訳で参照するものが数冊ずつ。二軍は、安心感&存在感のある「てにをは辞典」「シカゴマニュアル」「ロイヤル英文法」など。

 

次に本棚の整理。小説からナショジオから、なにからなにまでただただ本棚の大枠の中に収まるように置いていただけで、もうめちゃくちゃな状態だった。とりあえず全部出して、この棚に置いておくものと、そうでないものとに分類する。奥の方にきちんと並べられていたものは、いつかも思い出せないほど前に整理したときから手がつけられなかったものばかり。大半を別の場所に移動させることにする。ごっそり空いたスペースに、無事この場所を勝ち取った本たちを並べて終わり。

 

机の上も本棚もずいぶんスッキリした。掃除をすると運気が上がるとどこかで聞いたことがあるけど、本当にいいタイミングで仕事の話が舞い込む。きれいになった部屋で翻訳できるのが嬉しい。

3/9 新田さん勉強会in名古屋③ あらすじを書く

先週3/9の金曜日に参加した新田順也さんによる「OneNoteミニ勉強会」。

OneNoteの活用方法メールのテンプレート機能について書きました。今日は、「あらすじを書く」ということについて。

 

勉強会のメインテーマには関係なかったのですが、今回参加して個人的に一番響いたポイントです。

やることはそのまま、翻訳に取りかかる前に原文を読んで自分の言葉であらすじを書く。

会では軽く触れられた程度でしたが、これをやっておくと後の翻訳でとても役に立つ、ということを新田さんはおっしゃっていました。

 

実際にやってみると、やはり、時間も手間もかかります。

でも何とか頑張ってあらすじを書き、その後に翻訳をしてみて感じたのは、翻訳中に自分自身の視点の切り換えがスムーズにできるということ。一語一語を追う視点と、全体を俯瞰して見る視点。つまり、「木を見て森を見ず」に陥りにくい。今いる部分(木)が、全体のまとまり(森)のどの部分にあたるかを常に意識しながら作業を進められる、という感じです。

結果、論理展開に無理があれば気付きやすいので、誤訳はたいてい避けられるし、よりまとまりのある仕上がりになるように思います。

 

とはいえ、「あらすじを書く」ことに何らかの効果があることは誰でも予想がつくと思うのです。

問題は、やるかやらないか。原文をざーっと読んで分かった気になるのではなく、自分の言葉で説明できるところまで理解を深めておけるかどうか。

そこまでやって初めて、効果があるのではないかと思いました。

(そのためにも、やはり、チェックリストなど見える形で業務工程に組み入れておくことが大事。目の前の仕事に流されないように)

 

今回の勉強会は、少人数でざっくばらんに…というかたちだったので、ためになる話があちこちに散りばめられていました。一つでも二つでも業務に取り入れて行きたいと思います。

 

あと、翻訳者同士の交流はやっぱり楽しい♪

 

 

3/9 新田さん勉強会in名古屋② メールのテンプレートを活用する

先週3/9の金曜日に参加した新田順也さんによる「OneNoteミニ勉強会」。

昨日の記事ではメインテーマであるOneNoteについて書きました。今日は、メールのテンプレート機能について。

 

メールにテンプレート機能がある、ということを私は全く知りませんでした。なので当然使ったこともなかったのですが、これこそまさに、私のためにある機能でした(違)。

 

仕事をしていると、いろいろな人とメールのやりとりをします。

同じ人とやりとりを続けていくうちに、何気ない文面にも相手の雰囲気というかテンションというか、そんなものも徐々に感じ取れるようになってきて。それが楽しくもあり、ときに勝手に心配や不安に陥ってしまう原因になることも。

 

だから自分がメールを書くときには、わりと気をつかう方です。「要件を的確に」は大前提ですが、「読んだ人がほんの少し気が緩むようなメールにできたらいいな」というのもあって、自分なりにあれこれバランスを考えてしまいます。相手との距離感に応じて、♪、!、☆、顔文字(^^、^^;、m(_ _)mあたり)も使ってみたり。

でも、そのバランスを考え出すと、ひとつのメールを送るのにやたら時間がかかってしまいます。慣れれば多少の時間短縮はできるのですが、それでももう少し効率化を図りたいと思っていました。

 

それで使い始めたのがテンプレート機能。状況に応じてメールの定型文をあらかじめ用意しておくのです。たとえば、請求書の提出はコレ、翻訳者さんへの依頼はコレ、クライアントへの提出はコレ、といった具合に。で、このテンプレートファイルもOneNoteにまとめておきます。

あとはメールを送る前に、テンプレートを呼び出して、日付や数字を書き直し、どうでもいいっちゃどうでもいいことをほんの少し足して送ります(←本当はいらないんだろうけど。用事だけじゃやっぱ寂しいから)。

 

このテンプレート機能、たいていのメーラーに付いているようです(Outlookは確認済み)。同じような内容のメールを頻繁にやりとりするなら使わない手はないと思います。ひとつひとつは小さくても、積み重ねれば大きな時間短縮につながるはず。

 

次は「あらすじを書く」ことについて。

3/9 新田さん勉強会in名古屋① OneNoteで業務管理

先週3/9の金曜日に、新田順也さんによる「OneNoteミニ勉強会」に参加しました。

タイトルではOneNoteとうたっているものの、他にもいろいろなところに話が飛んで、とても充実した楽しい時間でした。

ご一緒させていただいた皆さま、ありがとうございました。

 

早速いくつか実践していますが、自分の中にある情報を整理するためにも何回かに分けてここに書いてみようと思います。

 

まずはOneNoteを活用した業務管理について(OneNoteというのはMicrosoftのデジタルノートアプリケーションです)。

先日聞いたお話を元に、まずやってみよう!と思ったのが次の2つ。

 

<1> 案件ごとに関連情報をひとつにまとめる。

特に、dropboxや共有ドキュメント(google docやspreadsheetなど)が活用されるようになってからというもの、どの情報がどこにあるかを関連づけて整理したいと思っていて。というのは、「あのデータ、見たいな」って思ったときに、メールを遡ったり、オンラインの情報なら検索し直したりしていたから。OneNoteにそういう情報を集約しておけば探し直す手間を省くことができる。

 

<2> やるべきことを整理してチェックリストにする。

コーディネーションの仕事はある程度流れがあるので、各段階でやっておくことをチェックリストにしておけば大事な工程を飛ばすことはないし、進捗具合も一目瞭然。

 

<1>はもう、なにを今更って感じですが、「あれ、どこにあったっけ?」が確実に減りました。まずこれがとても嬉しい! 

dropboxや共有ドキュメント、関連サイトのURL、用語集、スタイルシート、管理表などをまとめるほか、作業中に気付いたことや、考えたこともどんどん書いていっています。「なんでこうしたんだっけ?」って後になって思うことがあるので、思考の流れも一緒に記録するという目的で。

ただ、とにかく情報をポンポン入れていくっていうのはそうだけど、後々見つけ出すときのことも考えて、ページはなるべく細かく区切るようにしています。

 

<2>は、まず自分がやっていることを漏れなく書き出すことが必要で、それだけで一旦スッキリします。

OneNoteはワンクリックでチェックボックスを付けられるので、ダーッと書き出したらもうチェックリストのできあがり。あとは、作業を進めながらひとつひとつチェックを入れていく。そうすれば今自分がどこまでやって、あと何をしなければならないかがひと目で分かる!

 

OneNoteを活用するための準備をしていて思ったのは、何気なくやっていることにいかにムダが多いか、それと、To doを見える化するだけでも不安が少し和らぐということ。やらなきゃいけないことが目の前に溢れると、気ばかり焦ってしまっていたけど、リストにすればまずゴールが明確になるし、そこまでの行程だって明確になる。あとはやるだけって思える。そんなことに改めて気付きました。

 

次は「メールのテンプレート」について書きます。